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トクマルシューゴ インタビュー

ベッドルーム発 希代のシンガーソングライター、トクマルシューゴ・インタビュー
  /聞き手:ontonson 文:吉本美加
2004年、NYの小さなインディ・レーベルからリリースされたファーストアルバム"Night Piece"。宅録で作られたそのベッドルーム発プライベート・ミュージックは、部屋を飛び出して、世界中で聴かれるようになりました。トクマルシューゴが操るのはアコギ、ミュージカル・ソー、ウクレレ、リコーダーといった音色の優しいアコースティック楽器と、ひそやかな歌声。生み出される独特の浮遊感に心地よく身をゆだねた人も多いでしょう。 あれから1年。ライブを重ね、聴かれることを覚えた音楽は、前より少し饒舌に(驚くほど控えめな歌声なことに変わりはないけれど)、トクマルシューゴの中にある世界観を語り始めています。ドリーミーでありながらどこか生々しさも湛え、より一層の吸引力を増した珠玉のセカンドアルバム"L.S.T"制作秘話を伺いました。



― 基本的なことから聞いていきたいと思います。最初に楽器を持ったのがギターだった?バンドとかもやってたんですか?
ト:小さい頃ピアノをやってましたね。でも全然やる気はなくて、普通に先生が弾いてるのを聴いている方が好きだった(笑)。ギターを持ったのは14歳くらいかな。1日10時間とか練習してました。はじめはパンクとかをコピーして。それからいろんなジャンルのコピーをやりましたね。ジャズもハードロックもやったし。バンドを始めたのは16-7歳くらいで、いろんなバンドを転々としてました。ゲラーズっていうバンドは今でも続いています。もう8年くらい。
― ひとりで曲を作り始めたのはいつくらい?
ト:始めたのは17歳とかかな。基本的には曲を作り始めてからあんまり変わってない。だんだん進化していった感じですかね。
― その進化の過程でギター以外の他の楽器もちょこちょこ買って覚えっていったっていう感じ?
ト:そうですね。楽器がすごい好きなんですよ、弾くのが面白くて。ついでに録音してみようかな、って。
― 海外に住んでいたっていうのはどの時期なのかな。
ト: 18歳くらいから21歳くらいまで。2年ちょいロサンゼルスにいました。
― ミュージック・リレイテッドともそこで出会うの?
ト:向こうで知り合ったわけじゃないんです。日本に帰ってきてからライブハウスで知り合って仲良くなった外国人がいて。彼の友達がミュージック・リレイテッドをやっていたんです。デモテープがその友人づてで渡って。で、そこからリリースすることになった。ミュージック・リレイテッドはCDを出すこと自体僕のが初めてで初の流通、という感じで。謎が多いレーベルなんですけど(笑)。
― 別にじゃあ色んなところにデモを送ったわけじゃなくて、なんとなく繋がりで?
ト:そうそうそう。CDできた、わーい、みんなに聴いてもらおう、みたいな感じ(笑)。それで小田さん(MAP)のところにも送ってみたんです。
― 小田さんところに送ってなかったらこうはならないもんね。
ト:そうですねー。ライブも一切やってなかったですからね。ライブするのはほんっとに嫌だったんですよねー(笑)。嫌だって言ってるのに小田さんに1曲でもいいから出てよ、て言われて。じゃあ1曲だけ…みたいな(笑)。一応何曲かやりましたけど。
― 今回のアルバムが前のと比べて一番変わったところってすごく外向きな感じがするところだと思う。家で録ってるのにね。2枚目を作り始めたのって、やっぱりはじめてライブをやった以降のこと?
ト:そうですね、以降です。だから結構ライブの影響もあったりします。ファーストは、別に他人に聞かせることを特に考えてなかった。自分で作ったものを出してくれるレーベルがあるらしい、じゃあそいつに聴かせる用に作るか、っていう。でもライブをやるようになってこういう感じが気持ちいいんだなっていうのが分かってきたりもして。

― まず曲を作る時、何から始める?やっぱりギター?
ト:あ、意外とそんなにギターからは作んない。うーん、なんか、きっかけは他の楽器とか。(ライターを机の上に落としてカチっと鳴らしながら)こういう音とかだったりも。
― えっ!ちょっとアーティスティック!
ト:アーティスティックですよね(笑)。
一同:笑
ト:意外とそういう方が作りやすかったりするんですよね。ギターだといつも弾いてるから同じフレーズしか出てこなくて、全然新鮮味がなくて面白くないなっていう。ギターじゃない音を使って曲を作れないかなっていうことがきっかけで、変わっていったところがありますね。ファーストを作る前に一枚CDRがあるんですけど、ああ、こんなんでいいんだな、っていう感じがあって。なんでも音楽になるなっていうのに気づいたから、いっぱい作り始めた。
― なんでも音楽になるんだな、っていう発想のわりにはめちゃめちゃ音楽的ですよね。
ト:そうなんですよねー(笑)。それが多分本当に好きなものを出したくなると、結局そっちに行っちゃう。結局なんでも音楽にはなるんですけど、でも本当に好きなのはちゃんとしたものだったりする。
― 音楽然としたものになっていくんだ。
ト:そうそう。
― ファーストとセカンドって音を録った場所って同じなんですか?えらく音がいいですよね、前に比べて。
ト:全く同じです。前回と同じ機材で同じやり方なんですけどちょっとだけミックスのやり方を変えようかなと思ってエフェクターとかを変えたり。一つ一つの音にすごく執着はあって。一つ一つの音の、余計な周波数とかノイズとかを切っていって、すごく綺麗な音にしていった。そういうちゃんとしたやり方で一度やってみてどうなるかな、と。宅録でやってどこまでできるのかなっていうか。実際やってみたら面白かったですね。でももう二度とやりたくないなー。
一同:(笑)
― 前回のは2週間で作ったって言ってたけど、それよりも時間かかった?
ト:そうですね。今回はかなり時間掛けて。
― 演奏も?
ト:演奏は、一回しか録らないですね。ミスらない限りは。
― えー、本当!
ト:結局1回目に録ったのが1番良いんですよね。なんか人間っぽい感じがして。緊張してたら緊張してるのが出たりして面白いなって。なるべく下手さも残しておきたい。それよりは後の方(編集やミックスなど)に時間を掛けたい。
― ちなみに歌も1回だけ?
ト:あ、歌は結構録り直します…。
一同:(笑)
ト:歌は自信ないんで(笑)。

― トクマル君が歌い始めたのって、自然な感じで歌が欲しくなったから?最初から歌ってたわけじゃないような気がして。
ト:もともとボーカル志望じゃなかったから、はじめは誰かに歌ってもらうつもりでやっていて。でも結局誰かに歌ってもらうんだから歌は入れておこうかなっていう感じで適当に自分で仮歌を入れて。そういう感じで最初から自然と歌ってました。曲には歌があるもんだろう、って思ってたんですね(笑)。インストってなんだ?、みたいな。
― あんまり年変わんないけど、僕らより下の人たちって歌うことが恥ずかしいっていうのがちょっとあるのかなぁ、って思ってた。
ト:ああ、ありますよ(笑)。かなりありますよ。歌いたくないですもん、できるだけ。歌って欲しいなあって思う人がいたら、その人に全部歌って欲しいですよ。歌って欲しいと思う人が今はいないのかな(笑)。しょうがないから歌ってる感じがありますよ。
― でもファーストの時よりセカンドアルバムではしっかり歌ってるよね。
ト:そうですね、歌もの色がちょっと強くなったと思いますね。
― トクマル君の曲ってさ、いい意味で歌が前に出てないでしょう、全部フラットっていうか。いい感じで聞こえたり聞こえなかったりするけど、それって恥ずかしいからというわけじゃなくて、何か意図するところがあるんだよね?
ト:最近の曲って全部ボーカルがでかいなぁ、と思って(笑)。もともと楽器が好きで始めてるから、楽器が聴きたいな、っていうのがあって自然とそうなっちゃうんですよね。でも歌を引っ込め過ぎてもな、っていうのもある。
― すごい月並みな言い方だけど、歌も楽器みたいなところもあるっていうか。でもリミックスだとやっぱり歌を残すことが多いから、あれは全然違うものになってたね。
ト:みんなに、歌、前に出すなよって言っておけばよかったなー(笑)。
一同:(笑)
― それにしても歌詞を書くトクマル君て全然想像できないんですよ。
ト:僕、夢日記を結構つけていて。
― えーーっ!じゃあ歌詞は、夢からの引用、みたいなのが多いの?
ト:多いですかね、当てはめていく感じが多いんですよね、言葉を。夢って結構嘘ばっかりじゃないですか。でも実際に経験したことだから嘘ではないような気がして。恋の歌を書くなら恋しなきゃ駄目だ、っていうけど、頭の中でしてるからいいかな、みたいな(笑)。でもたぶん夢で見たことと、書いたことって全然違ったりするんですよね。でもそれでも後からみたらそれがまた結構面白かったりする。そういうのもありかな、と思って。
― 非常に生産的な日常を…。夢見る時間もムダにしない、みたいな(笑)。
ト:そうそうムダにしない(笑)。

MAP小田さんが遅れて登場。

― 話を聞いたら、歌詞を読んでみたくなった。歌詞カードつけてもよかったんじゃない?小田さん、歌詞ってちゃんと知ってます?
小:俺、実は、ポップミュージックって全然歌詞聴かないんですよ。だから俺、正直歌詞カードの意味ってあんまりわかんない。何か残る言葉がいくつかあればそれでいいっていうか。
ト:たぶん聴いただけでは歌詞で何言ってるか分からないんじゃないですかね(笑)。あんまり歌詞に意味を持たせたくないっていうのがあって。ぼんやりしちゃうんですよね。
小:でも結構、ポップスマナーに従った歌詞だったりするよね?
ト:うん。普通に、よくある言葉を使って。
― じゃあ、はっきりとは聞き取れない歌詞はちゃんと聴いて下さい、っていうことで(笑)。
ト:それが狙いだった、てことで(笑)。一応歌詞を載せてあるページをホームページには作ってあるんで、どうしても、っていう人がいたらそこで。
歌詞をどうしても読んでみたくなった、という方はこちらをクリック!


― 今回、前の作品よりファンタジーがあって、しかも前作より生々しい感じがする。一見相反してることなのに。それってすごいことだよね。狙って出来ることじゃないよね?
ト:狙ってないからじゃないですかね(笑)。ありがとうございます。
― いやいや狙ってるでしょ。狙ってるけれど狙わないというか。
小:トクマル君てものすごい現実的な人間やんな?
ト:そうですね。
小:妄想はすごく見るけどさ、すごく人間的には現実的だし理論的だし。理論と実践がすごくちゃんと伴ってるタイプなのに、妄想感っていうのが形に出来るっていうのがすごく不思議な感じがする。ポップスとしての組み立てっていうのはそういう現実感がないと全然出来ないものだけど。
ト:基本的にそれは結構意識してて。想像していることを組み立てるのはけっこう数字的に組み立てる力っていうのが強くて。両方うまい具合のバランスでやらないとダメだなって思っていて。たぶんジグソーパズルって考えられない人じゃ組み立てられないと思うんですよ。ピースの形とか数がわかんなかったりしたらダメで。そういう組み立てる力、っていうのはすごく気にしていてます。センスだけだと作れないですよね。たぶんそういうのが生々しく出てくるんじゃないですかね。わかんないですけど。
小:そん中でメロディってどういうピース?
ト:メロディーは枠、ですかね、基本的に。
小:一番真ん中の核の、最初に置くやつ、じゃなくて?
ト:じゃなくて、端っこ、みたいな感じ。オセロでいうと端っこみたいな感じですね。その枠というか淵が、絶対に必要なんですよね。でも端がなくても完成が見えるのがインストなのかな、という。
― でもあれだけ楽器をいっぱい重ねると、どことどこがぶつかるって理論的に考えなきゃいけなくなるよね、絶対に。でも…
小:アレンジ聴いたら、音とか結構ぶつかってるよね?そこらへんは音色で誤魔化されてるのかな。
ト:あまりに理路整然とされてるとつまんなくなるんですよね。ぼやーっとしてこないっていうか。
小:ベースもないしね。
― ああそう聞きたかったんだけど、ベースがないのはさ、あくまでマイクで録りたいから、ラインは要らないっていう思いがあるの?
ト:いや、ベースはいらないだろうって思って(笑)。基本的にソロではベースとドラムは要らないかなって。
― 逆に、マイクにこだわりすぎるあまり、ライン録りを意地でも入れない、みたいな感じでベースを入れないのかと思った。
ト:ラインを録らないっていうのは確かにこだわりではあるんですけどね(笑)。ベースを録る時も、ちゃんとマイクでとりますよ。キーボードとかは全部アンプで出して録ってます。エレキをそのままマイクで録ったりもしてますけどね。
小:空気の音が欲しいわけじゃないんだよね?むしろ邪魔なんだよね?
ト:そうですね、空気の音はノイズに聞こえてきて、今回のアルバムにはちょっと要らないかな、と思った。ノイズが必要な曲も絶対あるんですけど、今回は無かった。僕はマイクに入る全ての音、楽器もノイズも歌も、空気の音だと思ってるんです。空気の音が録りたい時、例えばノイズのサーって言う音とか風のボソボソ言ってる音とか、偶然入ったノイズ、例えば物が落ちたり、木の葉がサラサラいったり、もしくはギターの弦をかきむしる音とかライブ感のある音が録りたいってことだと思います。それがゆったり心地よい暖かい演出になるんですけどね。 空気の音がいらない、っていうのではなく、自分の部屋の音はいらない、っていうことですね。

― ソロではベースとドラムは要らないって言ったけど、今度のライブ (※2005年10月14日に渋谷O-Nestで行われたレコ発ライブのこと)は両方入るよね?
ト:そう、ライブはそうですね。ベースもドラムも入れて。やったらどうなるのかなって。実験ですかね。ライブだと面白いんじゃないかなって。
― なんでライブはひとりでやることが多いんですか?
ト:いや、友達がいないから(笑)。
一同:(笑).
― なんか、「俺の伴奏できるやついねぇだろう」、みたいなのがあるのかなと思って。
ト:あーでもそういうのもあったかも。なんか雰囲気が変わっちゃんじゃないか、っていうのは。でも今もう1人たまにポコポコ(パーカッションを)やってもらってる人がいるんですけど、そいつはもう自由にやらしてて。そいつは結構信頼してるから。奴なら大丈夫かなって。基本的に人がいると面倒くさいんですよ。でも今度は、面倒くさいのは承知で期待に応えてみようと。
― ライブはこれからも多いんですか?すごいペースでやってたもんね。
ト:来年はライブをちょっと少なくしようかと思ったりしてるんですけど、ダメですかね。これからいっぱい色んな人とやりたいなって。自分のはいいやって。
― 自分の曲でじゃなくて、っていう意味?
ト:自分の曲でもいいんですけど別に。それとは違った感じでやりたいなって。自分の作品も少し控えたいなと思っていて。コラボレーション系とかそういうことみたいなのをやっていこうかなと。ひとりずつ好きな人と1曲ずつ違う人とやりたいなって。
小:1曲ずつで1枚って結構あるから、1年間で12枚くらい出すみたいにシリーズ化したら?そうしたらみんなびっくりするよ。ひとり1曲で1枚作ってもみんなびっくりせーへんから、12枚組みボックスとか。
― デアゴスティーニみたいにさ、先にボックスだけ売っておいて中に入れてくださいっていうのはどう?
小:で、途中で出なくなったりするっていう。
一同:(笑)


トクマルシューゴ / Shugo Tokumaru web, myspace


1980年、東京生まれ。ギター、ミュージカルソー、ガラクタなどを自在に演奏するマルチインストゥルメンタリスト。高校卒業後、宅録をベースに活躍を始め、ベッドルームに篭って2週間という短期間で前作『night piece』を完成、NYのインディ・レーベル、music relatedよりリリース。その緻密かつ美しいサウンドが世界中で高い評価を得る。最近ではソロライブも多く、高度なギター・プレイ、ディレイ・ループとおもちゃを巧みに使い、浮遊感溢れるトクマル・サウンドを見事にステージで具現化。SAKE ROCK、二階堂和美、テニスコーツ、asunaといった個性的なアーティストたちとライブでコラボレーションも行なっている。
トクマルシューゴ 『L.S.T』 (CN-0006)
(compare notes records) ¥2,100
ニューヨークのレーベルより突如リリースされたファースト『Night Piece』で世界中の音楽ファンを魅了したトクマルシューゴ。セカンドアルバムが遂に登場です!前作同様アコースティック楽器と甘い歌声で紡がれたドリーミーな世界観はそのままですが、今作ではひとつひとつの音に圧倒的な「力」を持った強靭なサウンドを得て、より一層の吸引力を増した珠玉のポップソング集となっています!(release: Aug.2005)
Also available ...
 1st Album

 Shugo Tokumaru
  "Night Piece"
(CN-0006)

すみません!在庫切れです。
 Remix Album

 Shugo Tokumaru
 "NPRMX"(OSLCDR1)